近年、「スタートアップの上場離れ」ともいうべきテーマがスタートアップのコミュニティーにおいてホットなテーマになっている。
日本では、かつて多くの起業家にとって「株式上場」が一つの大きな目標とされていた。
株式上場は資金調達の手段であると同時に、スタートアップの成功を象徴するイベントであり、存在をアピールする重要な意味を持っている。しかし、近年ではスタートアップが上場を避け、M&A(企業の合併・買収)を通じてイグジット(事業売却)する例も増加している。なぜなのだろうか。
JETRO(日本貿易振興機構)が2020年8月に発表した調査によれば、世界的に最も一般的なエグジットの方法はM&Aである。しかし、国内ではM&AとIPO(株式公開)の比率が3:7と、他の国や地域とは逆の傾向が見られる。具体的には米国、東南アジア、インドでは90%以上、欧州では68%がM&Aでエグジットしている。
米国では、Facebook(現Meta)が2012年にInstagramを10億ドルで、Googleを提供するAlphabetが2006年にYouTubeを16億5000万ドルで買収した例が象徴的である。さらに、2020年12月にはSalesforceがSlackを277億ドルで買収したことも記憶に新しい。この買収は、Salesforceのクラウドベースのエンタープライズソリューションをさらに強化するための戦略的な動きであった。
日本でも、2021年にトヨタが子会社を通じて米国企業の自動運転部門であるLevel 5を買収するなど、M&Aによるスタートアップの大型買収例も目立ち始めている。
また、事業規模自体は巨大ではないものの、安定的に収益を稼げるいわゆる「スモールビジネス」においてもM&Aによるイグジット例が見られつつある。
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