「投資家と正しく話せる企業」は、時価総額が上がる──前回の記事「「投資家と正しく話せる企業」は“時価総額が上がる” 対話のポイント3つ」でも述べたように、このことに注目し、取り組みを強化する企業は増えています。とはえ、まだまだ消極的な企業が多いのが現状です。
企業が対話に消極的になる理由の一つとして、アクティビスト(物言う株主)への対応を懸念していることが挙げられます。今回は物言う株主との向き合い方や、株主提案がなされたときに、どのように企業成長というチャンスにつなげるべきかを解説します。
近年、日本企業に対する株主提案が増加し続けています。2024年6月に、株主総会を開く上場企業で株主提案を受けたのは91社と、3年連続で最多となりました。提案数で見ると、330議案を超えています。
三井住友信託銀行によると、機関投資家などが出した議案のうち、増配など財務関連の要求は全体の4割程度。取締役の選解任などガバナンス関連も4割程度を占めています。
かつては悪玉のイメージが強かったアクティビスト。無謀な増配提案や成長事業の売却、株主還元一辺倒の要求も多かったため「ハゲタカ」と呼ばれるなど、多くの企業から「迷惑な存在」と認識されていました。
しかし、そうした過去の時代とは違い、昨今は「アクティブ」という名の通り、積極的に企業と対話し「企業を良くしたい」というアクティビストが増えています。コーポレート・ガバナンスを改善しながら中長期的に企業の成長を後押しする提案など、他の株主・投資家から賛同を得るケースも目立ちます。その姿勢は従来見られた一方的かつ高圧的なものではなく、建設的な対話を求めるようになってきています。
このようなアクティビストに、企業はどのように向き合うべきでしょうか。まずは、これまでのイメージを改める必要があります。
アクティビストは決して「悪玉」ではなく、時に企業の「救世主」にもなり得る存在です。そもそも、自社に期待を寄せてくれる投資家という存在に対して「お金は出してほしいが、口は出さないでほしい」というスタンスでいては、良い対話ができるはずもありません。実際に、企業とともに課題に向き合い、解決に向けたポイントを提言してくれるアクティビストも多く存在します。
政策保有株式など独自の慣行の影響もあり、多くの日本企業が「株主は何も言わないことが当たり前」と考えてきたはずです。
これからは、株主は「物を言う」ということが大前提であると認識しましょう。そして、アクティビストを「経営を良くしてくれるパートナー」と捉え、対話を重ねていきます。アクティビストの意見・提言に真摯に向き合い、取締役会で議論し、経営改善に生かしていく姿勢が必要です。
また、社外取締役の設置にも言えることですが、経営改善のためには「社外の目」が不可欠です。経営ボードに社外の目を取り入れることと同様に、自社の大株主であるアクティビストと対話することは極めて重要です。投資家目線のフィードバックを経営に生かすことができれば、業績や企業価値の向上にもつながるでしょう。
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