日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「休みなくて、長時間があたりまえ」「シフトをうめるためにいくら働いても、自分がきついだけ」――2022年、こんな遺書を残して大分県のセブン-イレブン(以下、セブン)で店長をしていた38歳男性が亡くなった。
24時間営業で深夜勤務をするアルバイトが集まらない。そこで自らシフトに入るなどして6カ月間で1日も休みなく働いた末、重度のうつ病を発症。翌日、命を落としたという。
妻の訴えで労働基準監督署は調査を開始。店のオーナーは、彼の死は過重労働とは別の問題があったと主張したが、2024年11月に「労働災害」と認定された。
男性の「6カ月休みなし」という勤務時間データは、セブン本部にも送信されていたということで、労務管理はどうなっているかとマスコミが問い合わせたら、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)の広報は、「フランチャイズの個店にかかわる内容で、本部として答える立場にない」とピシャリ。これはFCビジネスの危機管理における定番回答で、要はこういうことを言っている。
「それってうちとFC契約している会社の労災でしょ? 亡くなった店長が休みしだったといわれても、それはその会社の問題であって、うちに文句を言ってくるのはお門違いですよ」
そういうFC本部側の本音も分からんでもない。ただ、この手の問題に多く関わった経験で言わせていただくと、もはやそういう「昭和の危機管理」が通用する時代ではない。筆者がセブン&アイの危機管理を手伝っていたら、ただただ企業イメージが悪くなるだけなので、こういう企業防御丸出しのマニュアル回答は控えるべきだと進言するだろう。
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