なぜ「赤本」は表紙を変えたのか 18歳の人口が減っても、売り上げが横ばいの理由:週末に「へえ」な話(1/4 ページ)
大学受験生にとって定番の「赤本」。だが、その歴史や制作の裏側を知る人は意外と少ない。表紙リニューアルの背景や売れ行きを左右する要因、さらに“最古の赤本”の行方など、その知られざる物語に迫る。
書店の大学受験対策コーナーに足を運ぶと、いわゆるロングセラーの本がたくさん並んでいる。『英単語ターゲット1900』(旺文社)、『チャート式』(数研出版)、『入試現代文へのアクセス』(河合出版)など。「懐かしいなあ。受験生のときに使っていたよ」といった声が聞こえてきそうだが、個人的に気になっている問題集がある。「赤本」だ。
ご存じの人も多いと思うが、赤本は大学入試の過去問題集である。受験生にとってはおなじみの存在だが、「いつからあるのか?」「どのようにつくっているのか?」といったことは、案外知られていない。いや、そもそも発行元の出版社名すら知らない人も多いのではないか。
ちょっと調べてみると、2024年には表紙のデザインを一新するという変化もあったが、それが売り上げにどのような影響を与えたのか。今回のコラムでは、赤本の知られざるエピソードに迫ってみたい。
赤本を発行しているのは、京都市に本社を置く「世界思想社教学社」である。最初の赤本が登場したのは、1954年のこと。当時、国家公務員採用試験ではすでに過去問が存在していた。であれば、大学入試でも同じことができるのでは――。そんな発想から、赤本の企画が始まったのだ。
また、同社は高校の副読本を手掛けていて、学校の現場とはつながりがあった。中でも社会科の教材がよく売れていたこともあって、「どこにニーズがあるか」は、ある程度把握していたようだ。
こうした背景があって生まれたのが、大学ごとの過去問をまとめた赤本である。先ほどから「赤本」という言葉を何度も使っているが、実は正式名は「大学入試シリーズ」。表紙の色から「赤本」と呼ばれるようになったようだが、名付け親は誰だったのか。
明確な文献は残っていないが、50年ほど前に新聞記事でも使われていたことから、当時の受験生たちが「赤本」と呼んでいて、「いつの間にか定着していった」という説が濃厚である。
編集部としては、長らく「大学入試シリーズ」にこだわっていたものの、2024年の創刊70周年をきっかけに「大学赤本シリーズ」に名称を変更。ようやく、“赤本”が正式名になったのである。
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