楽天モバイルの“単月黒字化”は可能なのか 反転攻勢に向けた2つの戦略と課題石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2023年02月18日 10時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 1GB以下0円の「UN-LIMIT VI」を廃したことで大幅な純減に見舞われていた楽天モバイルだが、既存ユーザーへの無料措置やポイントバックが終わり、ようやく純増基調を取り戻した。2月14日に開催された楽天グループの決算説明会で、その数値が明らかになった。残った全契約者が“課金ユーザー”に転じたことで、収入も急速に増加している。

 2023年中の黒字化を目指す楽天モバイルにとって、次に課題になりそうなのがARPU(1ユーザーあたりの平均収入)の向上や、コスト削減だ。ユーザーのデータ利用を促し、上限まで料金を上げるための施策が必要になる一方で、基地局への投資はもちろんのこと、ローミング費用やオペレーションコストの削減まで、手をつけるべきことは多い。プラチナバンドの獲得も、ここに貢献する。ここでは、そんな2022年度決算から、楽天モバイルの現在地を読み解いていきたい。

楽天モバイル 2022年はUN-LIMIT VIIで大幅な純減を記録した楽天モバイル。一方で、赤字を垂れ流していた構造は大きく変わった。写真は同プラン発表時の楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

12月で純増数が反転、それ以上に大きい売り上げの増加

 一時は500万契約を超えていた楽天モバイルだが、5月に1GB以下0円を廃したUN-LIMIT VIIを発表して以降、解約するユーザーが続出。契約者数は純減に見舞われた。UN-LIMIT VIIの導入は7月だが、8月まで1GB以下の場合は無料とし、9月〜10月は楽天ポイントでのポイントバックに切り替わったが、既存ユーザーの0円ないしは実質0円は続いていた格好だ。そのため、解約の波も分散し、その影響は移行措置を終了直後の11月まで続いた。

楽天モバイル 契約者数の減少は11月で止まり、12月、1月は純増を続けている

 UN-LIMIT VII発表直前のピーク時には500万を超えていた回線数は、10月に445万2000まで減少。11月に底を打ち、444万6000まで契約者数は落ち込んだ。一方、11月で解約がピークアウトしたことを受け、12月はついに純増へと転じている。契約者数は3万9000増の448万5000に回復。この傾向は年が明けた先月1月も続いており、同月31日に時点での契約者数は451万8000となった。解約が一段落したことで、純増基調を取り戻したように見える。

 とはいえ、1年前との比較で言うと、契約者数は横ばいに近い。同社の決算補足資料によると、2021年12月の契約者数は450万。2022年3月には、この数字が491万まで拡大しているが、2022年12月や2023年1月の純増数を見ると、ピーク時の500万契約を回復するには、年内いっぱいかかる可能性もある。“0円廃止ショック”が、1年以上尾を引いてしまった格好だ。

楽天モバイル 四半期ベースだと、契約者数が最大になったのは2022年第1四半期。実際は、第2四半期にいったん500万契約を超えてから純減が始まっている。2022年第4四半期で、振り出しに戻った格好だ

 一方で、UN-LIMIT VIIの導入によって、その中身は様変わりした。三木谷氏が「血の入れ替えは進んでいる」と語ったように、現時点での契約者は、最低でも1078円(税込み、以下同)支払う“課金ユーザー”だからだ。課金ユーザーだけで見ると、1月は294%増と大幅な成長を遂げている。逆に言えば、1年前までは楽天モバイルに料金を払っているユーザーの方が少なかった計算になる。0円廃止を急いだのも、そのためだ。

楽天モバイル 課金ユーザーの割合は、12月から増加に転じている

 課金ユーザーが大幅に増えた結果、MNOの通信サービスから得られる収入も大幅に上がった。2021年度第4四半期は、音声通話、データ通信、オプションを合算した売り上げはわずか79億2600万円だったのに対し、2022年度第4四半期には244億5400万円に急増。この3サービスを足したARPUも、424円から1533円へと、実に3倍以上の伸びを示している。契約者は1年前と同じ水準だが、収益構造は大きく変わったと見ていい。

楽天モバイル ユーザー数は変わっていないが、有料比率が高まったことで売り上げは増加した
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年06月13日 更新
  1. UQ mobileの新料金プランに乗り換えるべき? 旧プランと比較、Y!mobileや格安SIMも踏まえて解説 (2025年06月12日)
  2. 「ポケモンGO」大阪イベントでスマホの通信はどこまで快適だった? 1キャリアだけ厳しい結果に、その理由は? (2025年06月10日)
  3. auとUQ mobileの新料金プラン、8割が「魅力的ではない」と回答 「付加価値より安さ」を求める人が大半なのか (2025年06月13日)
  4. AppleがAIで出遅れても“後追い”で十分な理由、iOS 26は新デザインでAndroidとの差別化が明確に (2025年06月13日)
  5. 「シャープペンのような描き心地」をうたうタッチペン、極細1mmのペン先 エレコムから (2025年06月11日)
  6. “Xperiaキラー”なスマホ登場 「HUAWEI Pura 80 Ultra」の武器は望遠力、光学3.7倍と光学9.4倍を切り替え可能 (2025年06月12日)
  7. ハリポタモデルもある“デカバッテリー”スマホ「REDMI Turbo 4 Pro」が登場 (2025年06月12日)
  8. 「Android 16」正式版リリース 通知やメッセージを改善、高度なセキュリティ機能も (2025年06月11日)
  9. 楽天カードアプリ、所有するカードの画像を表示可能に セキュリティコードも分かる (2025年06月12日)
  10. ソフトバンクで約14万件の個人情報漏えいの恐れ 業務委託先企業で「不適切な取り扱い」の可能性 (2025年06月11日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー