新型iPhoneはなぜ「iPhone SE」ではなく「iPhone 16e」なのか

» 2025年02月20日 02時22分 公開
[田中聡ITmedia]

 Appleが最新スマートフォン「iPhone 16e」を発表した。

 iPhone 16eは、従来の「iPhone SE」シリーズの系譜に位置付けられるモデルだと考えると、製品名は「iPhone SE(第4世代)」とするのが妥当だ。しかし、ふたを開けてみると、製品名はiPhone SE(第4世代)ではなくiPhone 16eだった。「iPhone 16」は、Appleが2024年に発売した最新のシリーズ。「iPhone 16」「iPhone 16 Plus」「iPhone 16 Pro」「iPhone 16 Pro Max」の4モデルがあるが、そこにiPhone 16eが加わる形となる。

iPhone 16e
iPhone 16e 2月28日に発売される「iPhone 16e」

 なぜ、SEではなく16eになったのか。最も大きな理由は、従来のiPhone SEからデザインや形状が大きく変わったことだろう。iPhone SEシリーズはこれまでホームボタンを搭載しており、指紋認証のTouch IDにも対応してきた。特にiPhone SEの第2世代と第3世代は、2017年に発売した「iPhone 8」をベースにしており、4.7型ディスプレイを搭載した小型のボディーが支持されていた。

iPhone 16e いまだに根強い人気を誇るホームボタン付きのiPhone SE

 しかしiPhone 16eはホームボタンを搭載しておらず、Touch IDも非対応。生体認証はFace IDを利用する。一方で画面上部にさまざまな情報を表示する「ダイナミックアイランド」には対応しておらず、本体は事前のうわさ通り、「iPhone 14」がベースになっているようだ。ディスプレイが6.1型に大きくなったことで、本体サイズもアップした。

 従来のiPhone SEで継承してきたデザインや操作体系からの脱却を図る意味を込めて、あえてSEを廃したのだと思われる。では、なぜ「iPhone 14e」ではなく「iPhone 16e」なのか。その答えは、Appleの生成AIサービス「Apple Intelligence」への対応が関係している。

 Apple Intelligenceでは、文章の要約や校正、指示した要素を含む画像の生成、カスタム絵文字のジェン文字の作成ができる他、Siriの言語理解能力が向上し、より自然な会話でアプリ上の操作やタスク処理を指示できるようになる。また、SiriにChatGPTが統合され、Siriに尋ねるだけでChatGPTの専門知識を活用できるようになった。

iPhone 16e 画像や絵文字の生成も可能になる

 このApple Intelligenceに対応するiPhoneは、iPhone 16シリーズと「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」。ここで重要になるのが、iPhoneが搭載するプロセッサだ。Apple Intelligenceはオンデバイスとクラウドで処理をするが、オンデバイス処理については、機械学習をつかさどるNeural Engineの性能に依存する。例えばiPhone 16の「A18チップ」が搭載する16コアNeural Engineは生成Apple Intelligence向けに最適化されており、従来のチップよりも高速に機械学習を実行する。

 iPhone 16シリーズの1世代前であるiPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは、16コアNeural Engineを備える「A17 Pro」チップを搭載する。ちなみに「iPad mini(A17 Pro)」もA17 Pro搭載でApple Intelligenceにも対応する。一方、A16 Bionicチップを搭載する「iPhone 15」と「iPhone 15 Plus」がApple Intelligenceに対応していないのは、オンデバイス処理で十分な性能を発揮できないためだと思われる。つまりAシリーズのチップでApple Intelligenceに対応するには、A17以降が条件といえそうだ。

 そして、iPhone 16eが搭載するプロセッサは「A18」。これは、iPhone 16が搭載するものと同じ。つまりiPhone 16eは、CPU、GPU、Neural Engineにおいて、iPhone 16と同等の性能を持つことになる。iPhone 16と同世代のプロセッサを搭載することからも、iPhone 16eは16ファミリーの一員にふさわしい製品といえる。

 このApple Intelligenceの搭載も、従来のiPhone SEシリーズとの明確な違いになる。同時に、9万9800円(税込み)からという比較的低価格で手に入るモデルでApple Intelligenceを利用できることから、AppleもiPhone 16eをApple Intelligence普及の起爆剤として考えていることがうかがえる。

iPhone 16e Apple Intelligenceの対応機種。この中に最新のiPhone 16eも加わる

 AppleはiPhone 16を「Apple Intelligenceのために設計」したとうたっており、日本語未対応にもかかわらず、Apple IntelligenceをiPhone 16シリーズの一押し機能として訴求している。そしてこのうたい文句はiPhone 16eにも使われている。既存のiPhone 16シリーズ同様にApple Intelligenceを体験できることを考えると、製品名に「16」が付くのも納得がいく。

iPhone 16e iPhone 16はApple Intelligenceのために設計したことをうたっている
iPhone 16e 上記のコンセプトはiPhone 16eも含まれており、同じ「Apple Intelligenceのために設計」というフレーズが使われている

 そうなると気になるのが「e」の意味だ。SEの正式名称は「Special Edition」であると、Appleのマーケティング担当シニアヴァイスプレジデントのフィリップ・シラー氏が述べたそうだが、同様にeが「Edition」だとすると意味をなさないので、よりスペックを抑えた「Entry」、あるいは安価なモデルということで「Economy」という意味が含まれるのだろうか。

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