楽天モバイルの衛星通信なら“高速”でデータ通信できるワケ 「Rakuten最強衛星サービス」の魅力を解説(1/2 ページ)

スマートフォンの人口カバー率は99%を超えているが、山間部やへき地など、まだ電波が届かない場所は多い。そこで活用したいのが、衛星通信だ。楽天モバイルが2026年内に開始を予定している「Rakuten最強衛星サービス」は、専用機器がなくとも衛星経由で高速なデータ通信が可能になる。その秘密を解説していこう。

» 2025年05月26日 10時00分 公開
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 毎日の生活に欠かせないスマートフォンは、今や「つながること」が当たり前になりつつある。普段スマートフォンを使っていて、「圏外」の表示を見ることがないという人が大半だろう。今や携帯電話の人口カバー率はどのキャリアも99%を達成しており、多くの場所でつながる。

Rakuten最強衛星サービス 楽天モバイルは人口カバー率99.9%を実現しているが、図版の地図からも分かる通り、日本国土全体で見ると、空白になっているエリア外の部分は依然として大きい

 ただし、ここでいう人口カバー率とは、国勢調査に用いられる約500m区画(メッシュ)において、50%以上の場所で通信できるエリアをもとに算出したもの。裏を返せば、メッシュ内で電波の届かない場所があっても、半分以上届いていれば、カバーしているとみなされる。

 つまり人口カバー率99%だからといって、日本全土の99%で電波が届くわけではない。実際、日本全土における携帯電話の「面積カバー率」は、70%程度にとどまっている。

 例えば山間部やへき地などでは基地局の開設が困難なため、電波が届かない、あるいは届きにくい場所は存在する。山の奥地へキャンプに行き、スマホが圏外になったり、極端に通信が遅くなったりした経験のある人は多いだろう。また、災害が発生して万が一基地局がストップして圏外になった場合、連絡を取ったり情報を取得したりする手段がなくなる。

 こうした事態を解消してくれるのが、衛星通信だ。衛星通信では、宇宙空間に打ち上げられた人工衛星を介して通信が行える。宇宙空間から電波を送受信するので、理論上は日本全土をカバーできる。また、地上の携帯基地局がダウンしても、衛星とスマホが直接通信できれば緊急時でもスマホで通信可能になる。

 今回は、楽天モバイルが提供予定の衛星通信サービス「Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile」(以下「Rakuten最強衛星サービス」)に焦点を当て、その仕組みや魅力について解説していく。

Rakuten最強衛星サービス 2026年第4四半期にサービス開始を予定しているRakuten最強衛星サービス

衛星でも「ブロードバンド通信」を目指す米ASTとタッグを組んだ楽天モバイル

 「Rakuten最強衛星サービス」は、楽天モバイルが米AST SpaceMobile(以下、AST)との提携によって開発を進めており、2026年第4四半期の提供開始を予定している。

 ASTは、低軌道衛星を活用した市販スマートフォンとの直接“ブロードバンド通信”を目指してサービスを開発している。衛星通信とスマホの直接通信というと、メッセージ送る、音声通話をするといった、最低限の通信手段というイメージを持つ人も多いかもしれない。しかし「Rakuten 最強衛星サービス」では、専用のアンテナや電話を用意せずとも衛星経由でもビデオ通話や動画視聴ができるなど、普段と変わらないリッチな通信の実現を目指している。

 楽天は2020年3月にAST & Science(現AST SpaceMobile)に出資を行って戦略的パートナーシップを締結。それ以来、ASTの低軌道衛星と市販のスマートフォンとの直接通信を目指してプロジェクトを推進してきた。

 2022年9月には、ASTによる低軌道試験衛星「BlueWalker 3」の打ち上げに成功した。2023年4月には米テキサス州にて、AST、楽天モバイル、英Vodafone、米AT&Tの4社により、世界初となる、低軌道衛星によるモバイル・ブロードバンド通信を使用した、市販スマートフォン同士の音声通話試験に成功した。2023年9月には、米ハワイ州にて低軌道衛星と市販スマートフォン同士の5G接続に成功し、14Mbpsのダウンロード速度を記録した。

 2024年9月には、ASTが商用サービスで使用する衛星5機「BlueBird Block1」の打ち上げに成功した。

Rakuten最強衛星サービス BlueBird Block1のアンテナサイズは64.4平方メートルだが、次機はさらに大きな223平方メートルの巨大アンテナになる予定だ

 そして2025年4月には、福島県で「BlueBird Block1」につながった市販スマートフォンと、東京のスマートフォンでビデオ通話に成功。楽天モバイルが公開している試験動画を見る限り、音声もクリアに聞こえているようで、これなら普段のスマートフォンと同等の品質で使えそうだ。

Rakuten最強衛星サービス 衛星通信により、福島県から、東京都の楽天グループ三木谷浩史社長兼会長とのビデオ通話に成功した

 楽天モバイルとASTは商用サービスに向けて着実に実績を重ね、衛星とスマホを直接つなげての高速通信が可能になる準備が整いつつある。

Rakuten最強衛星サービスでスマホと低軌道衛星が直接通信する仕組み

 では、「Rakuten最強衛星サービス」は、どのような仕組みでスマートフォンとの直接通信を実現しているのか。

 下り通信の場合、地上に設置された「ゲートウェイ地球局」から、ASTの低軌道衛星「BlueBird」に向けて電波を発信する。この電波は衛星に向かって高周波数帯のQ/Vバンド(※)で発射され、衛星がLTE周波数に変換して地上のスマートフォンに届ける。

※Q/Vバンドは、40〜50GHz帯を示す。

Rakuten最強衛星サービス ゲートウェイ地球局が低軌道衛星と電波をやりとりすることで、衛星通信を実現している

 上りの通信については、スマートフォンから発射された電波を衛星が受信し、周波数をLTEからQ/Vバンドに変換して、衛星からゲートウェイ地球局に送信する。いずれも、衛星とスマートフォンが直接通信し、地上にあるゲートウェイ地球局を介して楽天回線につながっているというわけだ。

 ここで気になるのが、なぜ衛星通信でビデオ通話のようなリッチな通信が可能になるのかという点だ。現在ASTが運用している低軌道衛星「BlueBird Block 1」は、アンテナアレイが64.4平方メートルと大きく、次機アンテナは223平方メートルに拡張される予定。このように大きなアンテナを使ってより強い電波を送受信することで、衛星でも高速の通信を可能にしている。

Rakuten最強衛星サービス ASTが運用しているアンテナは、他社の衛星アンテナよりも大きいことを特徴としている

 2023年9月の実験では下り14Mbpsの速度が出ており、商用サービスでの通信速度はさらに向上する見込みだが、実際の通信速度は同時接続するユーザー数によって変動する。上りの通信速度については開示していないが、楽天モバイルとの試験でビデオ通話に成功している。

 「Rakuten最強衛星サービス」なら専用端末を使わずに高速通信を利用できることは分かったが、日本全土を100%カバーすることは、本当に可能なのだろうか? まず、ASTの衛星がカバーできる範囲は、1機あたり直径約3000kmとなる。その中で、プラチナバンドの700MHzなら直径48km、LTEの1.7GHzなら直径24kmのビームを当てることでエリア化する。

 1機だけでもある程度のエリアはカバーできるが、通信できるのは衛星が上空に来たときに限られる。楽天モバイルによると、衛星が50機あれば、日本全土のほぼ全ての時間帯で通信が可能になるが、エリアによっては通信が途切れる場合があるという。そこで、衛星を50機から96機に増やすことで、ほぼ常時通信が可能になるとのことだ。

Rakuten最強衛星サービス 衛星通信サービスによって、面積カバー率100%を目指す(領海域におけるカバーは検討中)

 もう1つ気になるのが、ゲートウェイ地球局が“地上”に存在していること。仮に災害が起きた際、地上の基地局と同じくゲートウェイ地球局がダウンしてしまう恐れがある。その場合、衛星通信サービスは利用できなくなってしまうのだろうか。

 楽天モバイルによると、ゲートウェイ地球局は福島県を含め、国内3カ所に設置する予定だという。そのうちの1カ所で異常事態が発生した場合でも、他の場所に設置予定のゲートウェイ地球局で衛星通信サービスを提供できるよう検討を進めているとのこと。非常時に備えてネットワークの冗長性が確保されていれば、安心できるだろう。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia Mobile 編集部/掲載内容有効期限:2025年6月1日