デジタル庁の平将明大臣は6月6日、「マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載」について、iPhoneへの実装が6月24日にスタートすると発表した。これまで「今春の終わり」として開発が進められていたが、最終的に6月下旬のスタートとなった。平大臣は、「iPhoneへの搭載によってUI/UXは格段によくなるので、iPhoneを利用している国民の皆さまは機能搭載を進めていただきたい」と話す。
マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載は、2つの機能で構成されている。1つは電子証明書で、これはマイナンバーカードのICチップ内に保管されている「利用者証明用電子証明書」と「署名用電子証明書」の2種類をスマートフォンに内蔵するというもの。
これは既にAndroid端末向けに、「スマホ用電子証明書搭載サービス」として2023年からスタートしている。マイナンバーカードに保管された電子証明書が大本になり、それを使ってサブの電子証明書を発行してスマートフォンに保管するという形になっている。
もう1つが属性証明機能で、マイナンバーカードの券面に記載された情報をデジタルデータとして保管する機能になる。氏名/住所/生年月日/性別の基本4情報に加えて、マイナンバーと顔写真が搭載される。マイナンバーカードを置き換える形で券面自体が搭載されるのではなく、電子証明書と同様にマイナンバーカードのデータをスマートフォン内に保管する、という機能になる。今回は、この電子証明書に加えて、属性証明機能がiPhone向けに搭載されることになる。
iPhoneで決済を行うApple Payでクレジットカードを搭載するように、Appleウォレットにマイナンバーカード機能を搭載することで、Apple Payと同様に生体認証だけで簡単にマイナンバーカードの機能が使えるようになるのが特徴だ。
券面自体を搭載するわけではないので、「iPhoneの画面の券面を見せて本人確認する」といった用途では使われない。iPhoneで提出したいデータを選んで生体認証などを使って取り出し、相手側に送信する。これによって、「20歳以上」といった年齢確認を行ったり、店頭での会員登録/契約時に本人の情報を提出したりできる。
自分で送信する情報を選べるため、「名前確認でカードを手渡したら、住所も見られた」といったこともなく、名前だけ送信するので他の情報にアクセスされずにすむ。もちろん、勝手にマイナンバーを吸い出されるといったこともない。
マイナンバーカードを使ってデータを発行するため、厳格に本人確認された情報がiPhone内に保管され、マイナンバーカードや運転免許証と同等の本人確認書類として利用できる。iPhoneの生体認証や暗証番号で送信するため、2要素認証によって安全性も担保される。
iPhoneでは、既にApple Payにおいてクレジットカード情報などを安全な領域に保管することで、10年以上決済手段として使われている。米国では一部州で運転免許証もiPhoneに搭載されており、外部から情報を盗まれるなどの被害は発生していないため、現時点で安全性は高いとされている。平大臣も、「開発にあたってはデジタル庁と事業者が議論を重ねて搭載に至っている。情報漏えいなどの懸念はあたらないだろう。ぜひ安心して使ってほしい」とアピールする。
6月24日のサービススタートに合わせて、iPhoneに搭載されたマイナンバーカード機能(電子証明書)を使ってマイナポータルへのログインが可能になり、薬や医療費、年金の記録の確認や引越し手続きなど、さまざまな行政サービスを利用できるようになる。
コンビニエンスストアのマルチコピー機を使って住民票の写しの交付などの証明書が取得できるコンビニ交付サービスは、既に対応が進められており、同時にサービス利用が可能になる。これらに関しては、既にAndroidが利用でき、同じ機能が利用できるようになる。
さらに、マイナンバーカードのICチップをスマートフォンで読み取って簡単に偽造チェック、本人確認が行えるデジタル庁の「マイナンバーカード対面確認アプリ」(iOS版)でもiPhoneへのマイナンバーカード機能の利用に対応する。これは7月中になる見込み。
平大臣は、さらに利用シーンの拡大を目指す方針を強調する。まずはマイナ保険証について、予定通り7月以降から一部医療機関などでスマートフォン対応を試験導入し、9月にも準備が整った施設からスタートする。当面は、既存のマイナ保検証リーダーにカードリーダーを外付けする形で対応する。これはiPhoneだけでなくAndroidも対応する。
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