今年2月ごろから報道で大きく取り上げられた、芸能人やスポーツ選手によるオンラインカジノ賭博問題。オンラインカジノは、それが合法である国や地域を本拠地としているため、その存在そのものが違法なわけではない。しかし日本からアクセスして有料で賭けを行うことは違法である。このことは多くの報道により、広く認知はされたのかなとは思う。
あれから2カ月半あまりが経過し、徐々に被疑者の書類送検が始まったことで、世間的には一段落したような雰囲気が漂っている。しかし実際には目立つ人の検挙が報じられただけで、一般人の関与者の捜査も行われている。実際にそちらのほうが人数が多いわけで、その対策は日本政府や社会全体にとって重要な課題である。
ギャンブル等への依存症対策は、内閣官房に専門の対策推進本部があり、政府にはギャンブル等依存症対策推進基本計画を策定する義務がある。少なくとも3年ごとに見直しが検討されている。また各都道府県にも、同様の依存症対策推進計画の策定が義務付けられている。
これと同調する形で、オンラインカジノの対策については、各省庁にもそれぞれ所管する法律上での対応が求められている。総務省では通信行政を所管するということで、ブロッキングを含めた対応の検討会が設置された。第1回目は4月23日、第2回目は4月28日とかなり早いペースで実施されているところだが、筆者は一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事として第2回目に参考人として報告を行った。
まだ具体的に検討を開始するというより、現段階では各方面からの情報を収集している段階であるが、今回はその第2回で報告されたデータを中心に、オンラインカジノの問題点を整理してみたい。
ギャンブル依存症は比較的古くからある疾病であり、その定義や治療法も確立されているところだが、医療機関から見た状況が、国立病院機構 久里浜医療センターから報告された。
同センターに初診として来院した患者から、主に行っているギャンブルの動向を、パンデミックの前後で比較した資料がある。これによれば、2017年4月から2019年3月までの調査では、パチンコ・パチスロが6割超であり、公営オンラインギャンブルおよび非合法オンラインギャンブルの割合は、合計でも14%程度である。
一方パンデミック後の22年6月から24年5月までの調査では、公営オンラインギャンブルが最多の40%となり、非合法オンラインギャンブルも19%となっている。オンラインというくくりで見れば、50%を超える。
合法な公営オンラインギャンブルというものがあるのかと思われるかもしれないが、これは競馬や競艇などの公営競技の投票券を、ネットで買うという行為である。逆にこうした公営ギャンブルを実際に競技場で行う人の割合は、わずか1%程度である。
これは「依存症として来院した人の割合」なので、実際の投票券購入者の割合ではない。しかしオンライン購入であることが、大きく依存症につながるという傾向は見て取れる。
もう少し広い調査として、専門医療機関へギャンブル依存症として受診した人の性別、年齢で分類したデータがある。これはオンラインに限らなういギャンブル依存者数という事になるが、男女別に見れば圧倒的に男性が多く、新規受診・入院患者数ともに30代が最多、次いで20代、40代という傾向になっている。
公益社団法人 「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中 紀子氏からは、同団体から支援を受けているオンラインカジノ経験者にアンケート調査を行った結果が報告された。こちらは調査母数は少ないが、違法なオンラインカジノに限定した調査となっている点で貴重である。
年齢の内訳としては、30代が合計54%で最多、次いで20代の22%、40代の21%と続き、割合順位は久里浜医療センターの調査とおおむね一致する。
また登録したオンラインカジノサイト数の調査も興味深い。初回ポイントを狙って複数サイトに登録するということで、1人が非常に多くのサイトとつながる実態が見て取れる。
またオンラインカジノを始めたきっかけとして、「広告やSNSでみかけたから」「YouTubeや配信サイトで見て興味を持ったから」が2トップとなっており、ネット上の情報に触れたことが大きい。
深刻なのは、オンラインカジノを始めてから借金するまでの期間の短さだ。実に63.4%の人がオンラインカジノを始めて1カ月以内に借金を始めているという。
参考までに08年の調査データもあるが、このときはギャンブル開始から借金へ転落するまで7年かかっている。勝負のスピードがこれまでのギャンブルと違いすぎることから、オンラインカジノではいかにあっという間に負けるのかということが浮き彫りになっている。
借金する先は、親や兄弟などの家族だけでなく、友人なども含まれる。またいわゆる闇金と言われる金融業者からの借り入れは41.1%にも上る。さらにはオンラインカジノを原因としての犯罪行為も46.2%にも上り、その内訳は横領、窃盗・万引きなどの犯罪に続き、口座売買や携帯の転売などの闇バイトにも及ぶ。
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