Microsoft & GoogleのAI新機能を一挙紹介 Gemini統合で「検索王者」の巻き返しなるか?その悩み、生成AIが解決【番外編】(1/2 ページ)

» 2025年06月05日 07時00分 公開
[酒井麻里子ITmedia]

連載:その悩み、生成AIが解決

アイデアが浮かばない、こんな無駄な作業なくしたい――。ビジネスパーソンを悩ませる日々のさまざまな困りごと、ChatGPTに聞いてみませんか? ITジャーナリストの酒井麻里子氏がプロンプトの書き方を伝授する。

 MicrosoftとGoogleが、それぞれ5月に開催した開発者向けカンファレンスでは、多くの新機能や新しいツールが発表された。一般のビジネスパーソンが日々の業務で恩恵を受けられる機能も多数登場した。これらによって今後の働き方はどう変化するのだろうか? まとめて解説する。

著者プロフィール:酒井麻里子(さかい・まりこ)

ITジャーナリスト/ライター。生成AIやXR、メタバースなどの新しいテクノロジーを中心に取材。その他、技術解説やスマホ・ガジェットなどのレビューも。著書に『趣味のChatGPT』(理工図書)、『先読み!IT×ビジネス講座ChatGPT』(共著・インプレス)など。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。株式会社ウレルブン代表。XRと最新テクノロジーのWEBマガジン「TechComm-R」運営。


Microsoft 365のAI機能が進化

 「Microsoft Build 2025」では、組織向けのMicrosoft 365 Copilotのアップデートとして、各アプリケーション内で利用できる新機能が公開された。

 新たに登場したツールの「Copilot Notebooks」は、複数ソースの情報を集約するもの。Copilot Chatの会話や、ファイル、会議の記録、リンクといった情報を1カ所にまとめ、それらについてCopilotに質問して回答を得られる。

「Copilot Notebooks」は、チャット画面のサイドバーから利用する。現在順次提供が開始されている(公式リリース動画より)

 これと似たコンセプトのツールには、Googleの「NotebookBook LM」がある。こちらはAIとのチャットを直接追加できる機能はないものの、ファイルやリンク、テキストなどを集約できるという点では共通している。

 このタイプのツールでポイントになるのは、「ソースとなる情報の選定は人間が行っている」という点だろう。プロンプトに応じてAIが勝手に集めてくる情報ではなく、人間のフィルターを通し、目的に合わせて選定された情報だけに基づいて回答を得られるので、ハルシネーションを避けて正確な情報集約をしたい場合にも安心して利用できる。

 Copilotチャットには、公式エージェントとして「Researcher」「Analyst」が登場。すでに試験提供が開始されており、Copilotチャットの「エージェントの入手」で表示できるエージェントストアから自分のチャットに追加できる。

 「Researcher」は、特定のトピックについて詳細に調べてレポートにまとめる機能で、ChatGPTやGeminiのDeep Researchにあたるものだ。また、「Analyst」は、アップロードしたデータの詳細な分析を実施する機能。こちらもChatGPTやGemini、Claudeなどでは以前から同様の機能が提供されていたが、そこに追い付いたかたちだ。

 どちらも他のAIツールでは以前から利用できた機能なので目新しさはないものの、業務ツールとして広く利用されているMicrosoft 365 Copilotで提供されるようになったことは、大きな意味を持つ。AI活用にそこまで意欲的ではない利用者や、社内規約などでツールをあまり使えない環境にある場合でもこれらの機能を利用できるなったことで、より多くのユーザーが恩恵を受けられるだろう。

詳細な検索を行いレポートを作成する「Researcher」も登場。チャット画面右側の「エージェントの入手」で表示される一覧から追加が可能

PDF全文翻訳も 「地味だけど便利」な機能が続々

 メールやスケジュール管理の機能も進化した。Outlookでは、キーワードで検索したときに、該当するメールの一覧に短い要約をつけて表示する機能を提供。探しているメールがどれなのかを見分けやすくする。また、添付ファイルつきのメールを受け取ったときに、ファイルを開かずに要点を確認できる機能も提供される。

メールを検索したときの結果に、内容を短くまとめた概要が表示されるようになる(Microsoft 365公式YouTubeより)

 Outlookではこのほかに、会議予定からその会議に関するメールや資料を自動収集して表示する機能や、チャットで文章で指示するだけで予定を登録できる機能なども提供される。メール対応やスケジュール調整といった作業は、地味ながら時間を取られることが多く、つい先延ばしにしてしまうことも多い。そういったタスクの効率化を後押しする機能は、AIのメリットを体感できるものとなるだろう。

 また、Edgeブラウザでは、PDFを全文翻訳できる機能が登場。6月から一般公開予定としている。この機能の便利なところは、単にテキストを翻訳するだけでなく、元のレイアウトを維持したまま新しいタブで翻訳版のページを表示できることだ。もちろんそのままダウンロードもできる。

 ブラウザ上で外国語のPDFを読む際に、テキストをコピーして翻訳ツールに貼り付けることはよくあるが、その方法だと元のPDFのどの場所に書かれていた情報なのかが分からなくなる。ファイル内の図表などと照らし合わせながら読みたい場合には特に不便だった。そういったストレスがなく数クリックで外国語の資料を読めるようになることで、情報収集の効率が大きく向上する。

Edgeでは、ネット上のPDFファイルを丸ごと翻訳できるようになる(公式リリース動画より)

 これらはいずれも「衝撃的で新しい機能」というわけではない。すでに他のツールを使えば実現できていたものも多い。それでも、こういった「地味に便利」な機能が日々の業務に使うツールに組み込まれ、当たり前に使うものとなっていくことは、組織全体の効率化という意味でもメリットが大きいだろう。

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