日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
ブランド誕生から106年、メーカー調べでは日本国民の99.7%が飲んだことがあるというカルピスに、ほんのわずかだが「異変」が起きている。
カルピスといえば創業当初の商品コピー「初恋の味」からも分かるように、乳酸飲料ならではの「甘酸っぱさ」が特徴だ。それが最近、「甘酸っぱい」よりも「甘い」を強調するようになっている。分かりやすいのは、生クリーム専門店「MILK(ミルク)」とのコラボ商品だ。
カルピスファンなら常識だが、カルピスと同店は2023年以降、限定コラボを続けており、2025年5月には第三弾が出た。その商品名を時系列に並べてみよう。
いかがだろう。年を追うごとに「甘いもの感」を強めてきてはいないか。最新のコラボに関しては、プレスリリースで「甘い物好きの皆さまも満足できる濃厚で滑らかなくちどけで、まさにスイーツのような味わいに仕上げました」とアピールするなど、カルピスファンだけではなく、スイーツファンも取り込もうとしていることがうかがえる。
実際、「カルピス SWEET PREMIUM 北海道生クリームのプリン風」を飲んでみると、確かにプリンのような甘さをまず感じて、後味としてカルピスらしさが広がる印象だ。2024年のチーズケーキ風味よりも心なしか甘く感じる。
というと、カルピスファンから「一つの限定のコラボくらいで勝手に決めつけるんじゃない!」というお叱りを受けるかもしれないが、「甘いアピール」に舵(かじ)を切っていると感じるのは、これだけではない。
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