シャープに聞く「AQUOS sense9」の進化と「AQUOS R9 pro」を作ったワケ 根底に“AQUOS R9の刷新”あり(1/4 ページ)

» 2024年12月24日 16時16分 公開
[石野純也ITmedia]

 2024年にデザインを刷新したAQUOSシリーズ。この変更に伴い、ど真ん中のミドルレンジモデルとしておなじみのAQUOS senseシリーズも、その見た目や中身を大きくリニューアルした。11月に発売された「AQUOS sense9」が、それだ。デザインがAQUOS R9に近づいていることに加え、ディスプレイやカメラなどが大きく進化。スマホに求められる“必要十分”を底上げした。

AQUOS sense9 ミッドレンジスマートフォン「AQUOS sense9」

 これと同時に発表されたのが、最上位モデルの「AQUOS R9 pro」だ。同モデルは、カメラに特化したスマホというコンセプトをより先鋭化させ、これまで搭載していた1型センサーに加え、超広角カメラやペリスコープ型の望遠カメラを搭載。3眼レンズ全体に対してライカのブランドである「VARIO-SUMMICRON(バリオ・ズミクロン)」という名称が与えられている。

AQUOS R9 pro カメラを大きく強化したハイエンドスマートフォン「AQUOS R9 pro」

 スマホらしい見た目を維持していたこれまでもAQUOS R proに対し、AQUOS R9 proは、よりカメラらしいデザインに振り切っているのも特徴だ。では、シャープはこの2機種をどのようなコンセプトで開発したのか。その開発経緯を、同社の通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の中江優晃氏と、パーソナル通信事業部 商品企画部の清水寛幸氏に聞いた。

カメラ、スピーカー、ディスプレイのギアをぐっと上げた

―― まず、AQUOS sense9についてうかがいます。もともと、これで十分という端末でしたが、今回は細かくあった不満も全てつぶされているような印象を受けました。どういうコンセプトで企画されたのでしょうか。

清水寛幸 シャープ パーソナル通信事業部 商品企画部の清水寛幸氏

清水氏 みんなが慣れてきた結果、「こんなもんかな」とワクワク感がなくなってきていましたが、「もっとこういうことができるぞ」ということをお届けしたかった。それはカラーも含めたデザインと、触れていただいたときの機能の両面があります。ずっと言っていることですが、スマホに詳しくない方にも、これを薦めておけば間違いないと言い訳なしで言える商品にしたいと思っていました。

 まず機能面からお話すると、一段ぐっとギアを上げたところが、カメラ、スピーカー、ディスプレイの3点です。カメラは標準のところはすごくいいと言われていましたが、それ以外のどのカメラを使ってもきれいに撮れるようにしました。超広角もそうですし、インカメラも性能を底上げしています。

 スピーカーは、ステレオ対応したことが1つありますが、それに伴ってボックス型のスピーカーを配置する形にしています。今までは、お値段や構造上スペースがなく、筐体自体を反響させるスピーカーにしていましたが、そこをもう一段進化させるため、ハイエンドモデルにも使われるボックス構造を採用しました。

 ディスプレイは、今までも1Hzから90Hzの可変リフレッシュレートをやっていましたが、その最大値を120Hzとハイエンド並みに上げています。また、明るさも全白輝度が1500ニトになり、日差しの下でも明るく見えるようになりました。

【訂正:2024年12月25日15時50分 初出時、AQUOS sense9の輝度に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】【更新:2024年12月26日10時10分 日差しの下での視認性に貢献するのは「全白輝度」のため、全白輝度に修正しました。】

 発表後、唯一ご指摘をいただているのは、3.5mmのイヤフォンジャック(がなくなったこと)です。もちろん、ニーズがあることは理解しつつも、ワイヤレスイヤフォンに移行している方が多く、端末のスペースなども総合的に考え、今回は省くことになりました。

AQUOS sense9 約6.1型ディスプレイは120Hz駆動に対応している

―― デザインが大きく変わったように見えますが、中身も総入れ替えぐらいになっていますね。

清水氏 ごっそり変わっています。共通点はメインカメラぐらいではないでしょうか。

中江氏 デザインを変えるタイミングだったので、(過去モデルとの)基板の共通化ができない状態でした。そういう意味だと、変えられるタイミングだったということです。

―― 細かい話ですが、バイブレーションも振動が細かなものに変わっています。内部構造を見直す過程で、ここも入れ替えたのでしょうか。

清水氏 以前のバイブは、バインバインと大きく動くのがイマイチと言われていましたが、このクラスでも使い勝手を追求することにしました。

中江氏 ここはチャレンジせざるを得ない部分でした。バイブでいうと、ハードウェアの入れ替えに合わせて、ソフトウェアのチューニングも頑張っています。企画メンバーや開発メンバーが集まり、何パターンものセッティングを変えた実機を並べて、検討しました。感覚だけでなく、どのぐらいで勢いを上げて、どのぐらいでブレーキをかけたらいいのかということを数値的に分析し、味付けを変えたものを触ってどれがいいのかを決めていきました。

ハイエンドモデルで培ったライカ画質のノウハウが生かされている

―― ここまで変えている一方で、オープンマーケット版は6万円を切っています(メモリ6GB/ストレージ128GBモデルの場合)。コスト的には大丈夫だったのでしょうか。

清水氏 確かに部品によってはお値段が上がっているところもありますが、そこは弊社の技術陣も頑張りました。工夫したのが他モデルとの共通化で、そこがうまくいっています。例えば、メインの広角カメラに関しては「AQUOS R9」と共通化されていますし、超広角カメラに関してはAQUOS R9だけでなくAQUOS R9 proまで全て同じものになります。ボリュームを出せると費用面や調達面で有利になるため、そういった工夫でコストダウンを図っています。もちろん、SoCが違うので画質は完全に同じになるわけではないのですが。

―― その画質ですが、AQUOS R9やR9 proと違い、sense9はライカ監修ではないですよね。それでも、以前のAQUOS senseに比べるとカメラも写りはかなりよくなっていると思います。

中江氏 ライカ画質とはなんぞや、というところですが、確かにAQUOS R9やR9 proはライカの評価を受け、ブラッシュアップされています。一方で、中で開発しているエンジニアは同じなので、そのノウハウはしっかり詰まっていて、ライカ画質に近い性能は出せています。承認を得ているわけではないのでライカ画質かというと違うのですが、カメラに関しては、AQUOS senseはもちろん、AQUOS wishにもライカと一緒にやってきた技術が下りてきています。

AQUOS sense9 AQUOS sense9のカメラはライカの監修は受けていないが、Rシリーズで培ってきた画質のノウハウが生かされている

―― 上位モデルでやったことが、全体のプラスになっているということですね。

中江優晃 シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の中江優晃氏

清水氏 そうなっています。手前みそですが、この数年でカメラの画質はぐっとよくなりました。

中江氏 画質はどんどんレベルが上がるというより、ある正解があって、そこにどれだけ近づけられるかの勝負です。正解を知っているのと知らないのでは、勝負の仕方が変わってきます。ライカと組むことで、ライカという正解をもって画質調整ができるからです。今までは、いろいろな人が見て、「こっちがいい」「いや、あっちがいい」とやっていましたが、そういったブレはなくなりました。チューニングしていく中で、はっきり答えが出せるのはめちゃくちゃ強いですね。

清水氏 その裏側では、弊社の社員もとにかく写真を撮りまくり、地味にチューニングしています。単にライカが見てくれただけではありません。僕も家では子どもの写真を撮りまくっています(笑)。

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