携帯電話の販売に携わっていると、1年の数え方は4月にスタートする「年度」で考えることが多い。販売から身を引いてしばらくたつが、今でもその癖は抜けていない。
2024年4月から始まった2024年度も、既に4分の3を消化した。ちょうど年度の中間に来るタイミングでGoogleの「Pixel 9シリーズ」やAppleの「iPhone 16シリーズ」がリリースされた。今回のPixel 9シリーズは外観にやや大きな変化があった。iPhone 16シリーズも、いわゆる無印モデル(iPhone 16)とその大画面モデル「iPhone 16 Plus」についてはカメラの並びが変わり、見た目の印象が大きく変わった。
これら2つの人気シリーズだけでなく、モトローラ製の廉価なフォルダブルスマホ「motorola razr 50s」「motorola razr 50d」を始め、12月までの間に特徴的なAndroidスマートフォンも複数登場した。携帯電話ショップの端末コーナーを見ると、2024年度に入ってから発売されたスマホが主力となっており、ここ数年の中でも“新鮮味”が強めな状態で1〜3月の「春商戦」に突入することになる。
端末の販売ランキングを見てみても、2024年度に入ってから発売されたモデルが上位に入っており、人気モデルは確かに売れてはいるようだ。しかし、携帯電話ショップの店頭の様子を見ていると、スマホがそれほど売れているようには見えない。実際に店頭で接客をしているスタッフに話を聞いてみても、スマホが売れているという実感はあまりないようだ。
ランキングとは裏腹に、新モデルがそれほど売れていないように見えるのはなぜなのか――現役店員から話を聞いた。
新モデルが発売されると、店頭に長蛇の列ができ、端末の手続きや受け取りに何時間も待たされる――それは、もはや過去の光景といえる。
最近では各キャリアの「オンラインショップ」を使えば新しいスマホを家で受け取れるし、店頭で買う場合も「来店予約」をすることで待ち時間を極小化できる。ゆえに、店がごった返すような“祭り”が起こりづらくなっているのだ。
しかし、祭りにはならないとはいえ、先述の通り販売ランキングを見ると、新モデルは“売れている”。携帯電話ショップから以前のような繁忙さを感じられないのは、なぜだろうか。店員はこう語る。
(携帯電話端末は)売れていないことはありません。しかし、「売れてる!」と大きく実感できるほどではないことも確かです。
新モデルでも人気のあるものは、発売直後のタイミングで指名買いをするお客さまもいます。ただ、昔と比べると指名買いは確実に少なくなりました。TVやネットで新モデルの登場を知って、出かけたついでにふらっと触りに来るお客さまもいるんですが、肌感覚では店まで来て触るお客さまは半減したように感じます
指名買いを除くと、見て触って買おうというお客さまは減ったように感じます。新モデルが発売されたタイミングだと、以前は「在庫あり」が強い訴求になっていたんですが、最近は「在庫あり」もあまり刺さらなくなってきました。
機種やカラー、ストレージ容量など、人気/不人気の理由はいろいろありますが、新しい機種が出たことを知ってやってきたお客さまが、「予定外だけど、今日買い替えてしまおう」という行動をしなくなったので、結果的に売り場で「売れていない」ように見えるようになったことは確かですね。
台数ベースで見ると、機種によってはもちろん売れています。(売り場の)見かけ以上に数は出ています。
でも、以前のように「新機種が出るから、今月は忙しくなるぞ!」とか「新機種も出たし、これから年度末までは売りまくるだけ」という雰囲気にはならないですね。良くも悪くも、落ち着いているように思えます。
店頭の様子とは裏腹に、端末は着実に売れているが、「売れているか?」と聞かれると微妙な情勢――総じて、そのような状況にあるようだ。
しかし、なぜ実態と見た目(あるいは現場の感触)に乖離(かいり)が生じてしまっているのだろうか。
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