2025年春、ミッドレンジのスマートフォン市場に注目すべき2つの新モデルが登場した。Appleの「iPhone 16e」とGoogleの「Pixel 9a」だ。これらは両社のフラグシップモデルの技術を受け継ぎながらも、手の届きやすい価格帯に最新のAI機能を提供することを目指している。
特に2024年からのAI競争が激化する中、どちらのメーカーも「高度なAI機能を使える入門機」というコンセプトを打ち出している点が興味深い。本レビューでは、価格、デザイン、ディスプレイ、性能、カメラ、AI機能などの観点から両機種を徹底比較し、それぞれの特徴と使い勝手を検証していく。スマートフォンの買い替えを検討している方々の参考になれば幸いだ。
まず両機種の公式価格を見てみよう。Apple StoreでのiPhone 16eは128GBモデルで9万9800円(税込み、以下同)からのスタート。一方、4月16日に発売されたPixel 9aは、Google Storeで7万9900円からとなっている。
特にiPhone 16eについては、前モデルにあたるiPhone SE(第3世代)の5万7800円から大幅な値上げとなった。これには多くのユーザーが驚いたようだ。キャリア各社が割引キャンペーンを展開しているものの、基本価格の高さは覆いがたい。
Appleは「AI機能が体験できるやや間口の高い入門機」という位置付けに対し、Googleは「AIを含めた最新機能が使えるコスパ端末」といったポジショニングとみられる。
興味深いのは、両社ともにミッドレンジモデルに最新チップを搭載していることだ。iPhone 16eはA18チップを、Pixel 9aはTensor G4を採用し、いずれも上位機種に準ずる処理性能を備えている。これは、AIという計算負荷の高い機能をより低い価格帯で実現するための必須条件だ。
iPhone 16eはiPhone 14のデザインを踏襲しており、167g・厚さ7.8mmの薄型軽量設計となっている。一方のPixel 9aは186g・厚さ8.9mmとやや厚めだが、カメラ部が突出しない新デザインとなっている。
側面素材はどちらもアルミフレームを採用。背面はiPhone 16eがガラス、Pixel 9aはプラスチック製で、どちらも磨りガラスのようなマットな質感となっている。手に持った感触はiPhone 16eが角張った印象を受けるのに対し、Pixel 9aは背面の継ぎ目にアールが付けられていてより手になじむように感じる。
iPhone 16eはPixel 9aよりもコンパクトで軽量な設計となっている。iPhone 16eは167gでPixel 9aの186gより19g軽く、サイズも71.5×146.7×7.8mmとPixel 9aの73.3×154.7×8.9mmに比べて全体的にスリムだ。特に厚さが約1.1mm薄いのと、高さが約8mm低いため、ポケットに入れた際の存在感や片手での操作性はiPhone 16eに軍配が上がる。ただし、大画面を求めるユーザーにとっては、Pixel 9aの6.3型ディスプレイの方が魅力的かもしれない。
背面のカメラ部分は、iPhone 16eはシングルレンズが実寸で約1.5mm突き出た形状となっている。Pixel 9aは本体に厚みを持たせた分、水滴型のデュアルレンズ突出を1mm以下に抑えている。机の上に置いたときの安定感はPixel 9aの方が優れており、ケースを付けずに使った印象ではPixel 9aが優れていると感じた。
カラーバリエーションの違いも印象深い。iPhone 16eがホワイトとブラックという基本色2色のみであるのに対し、Pixel 9aはObsidian(黒)、Porcelain(白)に加え、Iris(紫)とPeony(ピンク)の計4色を展開している。カラフルな色を好むユーザーにとっては、Pixel 9aの方が魅力的だろう。
なお、両機種ともIP68等級の防水・防塵(じん)性能を備えているため、日常使いでの耐久性に差はない。
ディスプレイのスペックではPixelに分がある。iPhone 16eが6.1型Super Retina XDR OLEDディスプレイ(1170×2532ピクセル)を採用しているのに対し、Pixel 9aは6.3型Actua OLEDディスプレイ(1080×2424ピクセル)を搭載している。
最大の違いはリフレッシュレートだ。iPhone 16eは60Hzの固定レートであるのに対し、Pixel 9aは120Hzの可変リフレッシュレートに対応。スクロールやアニメーションの滑らかさは明らかにPixel 9aが優れている。スマホでゲームをよくプレイするユーザーや、UI(ユーザーインタフェース)の動きの滑らかさを重視するなら、この差は大きい。
輝度も大きく異なる。iPhone 16eが通常800ニト、HDR表示時の最大1200ニトであるのに対し、Pixel 9aは最大2700ニトの明るさを実現。直射日光の下での視認性はPixel 9aが上回っていた。
ディスプレイの発色にも特徴がある。iPhone 16eは自然な色再現性に優れ、やや暖色系の表示傾向。一方のPixel 9aは彩度高めで、特に青色の表現が鮮やかだ。どちらがいいかは好みの問題で、写真や映像をよく見る人は実機で確認することをお勧めする。
前面デザインはiPhone 16eがノッチを残しているのに対し、Pixel 9aはパンチホールカメラを搭載している。ディスプレイのベゼルはどちらも上位機種より太めで、iPhone 16eが実寸で約2.3mm、Pixel 9aは実寸で約2.5mmとなっている。
生体認証はiPhone 16eはノッチ内のTrueDepthカメラによるFace ID、つまり顔認証システムを採用している。マスク着用時にも対応するなど、高い認識精度を備えている。一方のPixel 9aはディスプレイ内蔵式の光学式指紋認証センサーを主な認証方式としているが、インカメラを使った顔認証にも対応している。指紋認証は指先をディスプレイの特定位置に置くだけで素早くロック解除でき、暗所でも確実に動作する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.