実はシャープは経営危機にあえいでいた2015年、米国でのテレビ自主生産・販売から撤退し、ハイセンスに「SHARP」「AQUOS」などのブランドを供与していた。それを鴻海の傘下に入ってから方針を変え、2019年にハイセンスとの契約を見直してブランドを取り戻していたのである。
そこで鴻海としては、買収した「SHARP」「AQUOS」というブランドを1日でも早く立て直して、シナジー効果を得たいと動き出すわけだが、ほどなくして、鴻海が目指す「日本ブランド再生計画」を先に実行してしまう中国企業が現れる。
そう、ハイセンスだ。
これには鴻海の経営陣は焦ったはずだ。2016年に買収してからなかなか「液晶のシャープ」を復活させられないのに、ハイセンスは2018年に買収した「REGZA」の復活に成功。しかも若年層を中心に「ハイセンス」ブランドのテレビまで売れている。なんとか早く北米で結果を出さなくては――。そんな焦りが、経営陣の状況判断を誤らせて、赤字体質のSDPを買い戻すという暴挙につながったのではないか。
もちろん、これはあくまで筆者の想像に過ぎない。ただ、このように過去の栄光や成功体験に固執するあまりに、冷静な状況判断ができなかった、というのは鴻海から送り込まれた呉柏勲(ご・はくくん)シャープ代表取締役社長も5月14日に認めている。
「過去2年間で非常に大きな変化があり、対応が足りなかった」
実はこれは失敗する組織の「あるある」だ。指導者層は議論と熟慮を重ねて「これがベストだ」と決断しているのだが、客観的にみると、過去の成功体験に引きずられて「変化」に背を向けていることがよくある。
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